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Technology技術紹介

結晶制御技術

田中化学研究所が開発・製造する製品は、水酸化ニッケルをはじめ、広くいえばすべて金属化合物。この金属化合物は、たとえ同じもの(化学式が同じ化合物)であっても結晶構造の違いで性質が大きく異なることがあります。当社では製品の結晶構造を変化させ、さまざまな電池用途にあわせた結晶構造の材料を作製することに成功しています。

概要

結晶構造がいかに規則的になっているかを表す言葉として「結晶性」が高い、低いと言われますが、電池材料の場合、最適な結晶性は、電池の種類や電池メーカーの設計などによってそれぞれ違ってきます。たとえばリチウムイオン電池向け前駆体には、結晶性の高い(原子が規則的に配置された格子構造になっている状態)材料を求められることが多く、ニッケル水素電池向けの正極材には、ある程度結晶性が低い(不規則な構造を持ち均一性や統一性に欠ける状態)材料の方が適しているとされています。当社では正極材や前駆体の製造時において、独自ノウハウによる反応制御を実施することにより、製造する製品の結晶性もコントロールしています。

この技術のメリット 充放電時の電池内での化学反応のしやすさをコントロールすることで、電池出力向上に貢献
この技術が利用
されている電池
リチウムイオン電池(Li-ion battery)
ニッケル水素電池(Ni-MH battery)

参考資料

図1 NiCoMn前駆体のX線回析パターン

図2 結晶性の異なるNiCoMn前駆体比較

Point

図1はCoおよびMnを共沈した水酸化ニッケルの粉末X線回折パターンとなります。β型水酸化ニッケルに特徴的なピーク以外の不純物ピークは見られておらず、水酸化ニッケルの母体構造に対し、CoとMnが原子レベルで均一に添加されていることが分かります。また、図2は同じ組成をもち、結晶性を変化させた2つの当社製品の比較データとなります。同じ組成をもつ製品なのでピークの位置は同じですがAとBでは半値幅(ピークの1/2高さにおける広がり具合:点線矢印)が違います。結晶に欠陥がなく、周期的に配置されている物質の場合、X線ビームは試料がもつ結晶面によって同じ角度に回折されますが、周期性が低い場合にはピークはより広いものとなり半値幅が広がります。つまりこれはAは結晶性が高く、Bは結晶性が低いことを意味しています。