Technology技術紹介
複数元素共沈技術
従来製法では、これらの複数元素が一見均一に混ざっているように見えても原子レベルでは偏在している場合がありました。複数元素共沈技術は、共沈と呼ばれる方法で、粒子内部にある複数の元素を均一に分散し、沈殿させる技術です。
概要 | たとえばリチウムイオン電池用の前駆体としてニッケル系材料を製造する場合、ニッケルにアルミニウムを添加することで熱安定性があがり、安全性が向上します。当社ではこの際、ニッケルとアルミニウムなどの複数元素を単純に混ぜ合わせるだけでなく、共沈(複数元素を同時に沈殿させ、比率の保たれた均質な沈殿物を作製する手法)させることで、粒子内部の原子レベルまで均一に元素が分散沈殿した製品を製造しています。複数の元素を均一に分散させて共沈させるには、混ぜ合わせる元素の種類や割合などに応じて、それぞれ最適な反応制御を実施しながら製造する必要があります。当社ではこれまでの知見や経験により、複数元素を適切に条件制御して共沈させる技術を保有しています。 |
---|---|
この技術のメリット | 粒子ごとの品質のバラツキがなくなり、電池性能の安定化に貢献 |
この技術が利用 されている電池 |
リチウムイオン電池 (Li-ion battery) ニッケル水素電池 (Ni-MH battery) |
参考資料

Ni

Co

Mn
この共沈技術を利用して製造した製品の元素分布を計測してみると、それぞれの含有元素が1つの粒子内で均一に分布していること、加えて、粒子群におけるそれぞれの粒子が同様の元素分布をもつことが分かります。これは中和工程で水酸化物粒子が析出する際にそれぞれの元素が同時に析出していることを意味し、当社経験に基づく反応条件の制御にて、このような元素分布状態を実現しています。
共沈させる複数元素について
複数元素を共沈させることができる「複数元素共沈技術」は、当社のコア技術のひとつですが、そもそも「どんな種類の元素をどんな割合で共沈させるのか」共沈させる複数元素の選定も、正極材料メーカーの腕の見せどころです。
共沈させる元素 | 効果 |
---|---|
ニッケル | 電池容量UP |
コバルト | 性能安定化 |
マンガン | コスト低減 |
アルミニウム | 熱安定性 サイクル特性向上 |
共沈させる元素 | 効果 |
---|---|
ニッケル | 電池容量UP |
コバルト | 高温特性向上 |
亜鉛 | サイクル特性向上 |
二次電池は充電により繰り返し使える電池ですが、充放電を繰り返すことで徐々に容量が減っていってしまいます。これをサイクル寿命といい、充放電回数によって、どれくらい容量が減っていくのか劣化具合を表したものをサイクル特性と言います。つまり「アルミニウム」や「亜鉛」は、電池の高寿命化につながる効果があります。
田中化学研究所は、上記のような元素ごとの特性を考慮しながら、お客さまの要望に応えることができる最適なバランスの元素の組み合わせや割合を導き出し、それらを共沈させることで、高性能な材料を製造しています。