社員インタビュー

RESEARCHER INTERVIEW
ハイパワー・高容量の
二次電池正極材料・前駆体の開発
技術開発部
N.K
(工学部 電気系工学修了 2012年入社)

これまでにないハイパワー・高容量の電池を目指し、
次世代型「正極材料」開発に挑む。

兵庫から福井へ

生まれも育ちも大学も兵庫県。福井県は縁もゆかりもない土地でしたが、これまで学んできたことを活かせる仕事をしたくて、この会社に就職しました。
大学では電子素子について学び、大学院での3年間は電池について研究。中でも「正極材料」がメインの研究テーマでした。研究室では企業との共同研究も行っており、そのうちの一社が田中化学研究所。だからこの会社のことは学生時代から知っていました。
正極材料は電池の性能を左右するキーマテリアル。しかしこれを扱っている会社は少ない。電池、特に充放電できる二次電池の有用性は今後ますます高まっていくでしょう。新しい正極材料を開発できれば、電池の性能アップを通じて社会にも貢献できる。そんな思いもあって当社への就職を決心し、福井県にやって来ました。

次世代型正極材料の開発

私がいま取り組んでいるのは、車載用リチウムイオン電池の正極材料、その「前駆体」の開発です。リチウムイオン電池の充電と放電は、リチウムイオンが正極と負極の間を移動することで行われます。その時リチウムイオンを出し入れするのが正極活物質で、その性能を決めるのに重要な役目を担っているのが前駆体です。前駆体とは、コバルトなどさまざまな金属の水酸化物で、これを原料としてリチウムと化学反応させることによって活物質を合成するのです。電池の性能は正極材料が決め、正極材料の性能を決める大きな要素が前駆体というわけです。

電気自動車に搭載予定

私がいま開発している前駆体は、数年後に発売される電気自動車やプラグイン・ハイブリッド車への搭載が予定されています。これら車載用電池の目下の課題は「パワー」と「容量」のさらなる向上。現在のハイブリッド車では、電池でのモーター走行はあくまでもエンジン走行をアシストする補助的なもの。将来の電気自動車ではもっと大きなパワーが必要とされます。一方、電気自動車の方はフル充電での走行距離はせいぜい200数十㎞。これをガソリン車並みの500㎞にまで高める必要があり、そのためには電池の充電容量をもっと上げる必要があるのです。

ナノの精度で形状をチューニング

電池の容量は、素材となる金属に依存します。こちらについてはコバルト・ニッケル・マンガンを組み合わせた三元系材料の開発によってアプローチ。もう一方のパワーについては前駆体の粒子の形状コントロールによってアプローチしていきます。
パワーは正極材料の表面積によって決定づけられます。すなわち1立方㎝のパッケージがあったとして、その中に詰め込んだ粒子の総表面積をいかに大きくしていくか。形状はできるだけ正球に近いほうがいいか。粒子の大きさは揃っている方がいいか?それとも大きな粒子の空隙を小さな粒子が埋めるような構成にすべきか?粒子の表面は平滑がいいか、あるいは凹凸を設ければさらに表面積を増やせるのではないか…こうした形状チューニングをナノレベルの精度で行っていくのです。
近い将来、私が開発に携わった電池を載せた自動車が、日本の道路を走ります。その姿を想像しながら、今日もナノの世界との格闘を続けています。

OTHER INTERVIEW

OTHER CONTENTS